Climbing Mate Club

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5/14座学 プロテクションの種類と設置の方法

5月14日の例会では来る5月24日のネイリング・ビレイ訓練の予習としての座学が開催されました。講師は乃村昌広SL 。
内容は以下の通りでした。
① ピトン(ハーケン)
クラックを利用するプロテクション。設置にはハンマーを必要とする。
《軟鉄製とクロモリ》
・軟鉄製:形状は縦、横、ウェーブのものがある。
柔らかく、打ち込むとクラックに沿って曲がるので、基本的に再使用は不可。回収も困難。
・クロモリ:クロームモリブデン鋼製。形状としては薄い順に、ラープ、ナイフブレード、バガブー、ロストアロー、アングル。
何度でも抜いて使用することが可能。
抜き方には、ハンマーを用いるが、時にカラビナを4~5個程度連結させたカラビナチェーン(カラビナは凄く痛むのでホームセンターの安いのを専用に使うと良い)やワイヤーをハンマーに接続して用いる事もある。
 
② SLCD ( Spring Loaded Caming Device )
いわゆる「カム」のこと。
ワイルドカントリー社製のフレンズが製品の起源。
カム(3枚と4枚あり)、カム軸(1軸と2軸あり)、本体軸 (1軸と2軸あり)など、製品により構造は様々。カムが3枚は4枚に比して動きやすい欠点があるが、幅が狭く奥行きのないクラックには設置し易くなる。
本体軸が2軸のものは1軸に比べて動きやすい。
現在代表的なものはBlack Diamond 社のCAMALOT  C4、X4、C3。
拡がろうとするカムと岩との間の摩擦力で支持力を得る構造になっている。クラック・クライミングの支点として使用される。
大から小まで、例えばブラックダイアモンドのキャメロットC4は有効巾195mmから14mmまで10種類の大きさがある。カムの破断強度は大きさにより、5~15KN程度である(実際の墜落時の衝撃には達していないが、その分はロープが延びて吸収されることを考慮してのこと)。 
X4はキャメロットC3とキャメロットC4のサイズレンジの隙間を埋める、4カム、シングルステムのカミングディバイス。
C3はマイクロ3カム。3枚のカムがオーバーラップしたインターロッキング構造により、ヘッドをコンパクトにすることができ、様々な形状のクラックやポケットにセットが可能 。
メーカーにより、カムのサイズと色に違いがあるため、出来れば購入時には同一メーカーのものを揃えると直感的に覚えやすく見分けやすい。
また、ラッキングにも色々とくふうがあり、例えば背中側に一番大きいサイズのカムが来て、腹側に行くにつれて小さなサイズになるようにラッキングするとか、片側2セットラッキングのときには、カムは同じサイズのカムのカラビナにもう一方を引っ掛けてラッキングするとか。
必死になっているときには、意外とこのラッキングが重要になる。
カムを設置するときは、原則として墜落時にカムに掛かる力の方向に一致する向きにカムを設置する。
まず、一本目は水平からやや上向きに設置する。これは、一本目は墜落時に確保者との位置関係により、真横に引かれることが多いためである。
それ以降のカムについては、原則、壁面に対して水平より45°位下向きに設置する。
セットには上部がやや広く、下方に向かって狭くなっている部分が最適で、その広いところからカムを差し入れて、狭い下方に向かって引っ掛けるようにセットする。
セット時のトリガーは約50%~90%閉じた状態で、出来るだけ閉じてセットする。50%未満の閉じ具合では、墜落時に衝撃に耐えられる摩擦力が得られない可能性が高くなるため。完全に閉じきってセットすると、回収時に、抜けにくく、大変になるため80~90%までに留めてセットするのがよいとのこと。
また、オフセットした壁(クラックの左右の壁面に段差が有るような壁)の場合には、浅い方の壁(引っ込んでいる方の壁)側にカムの内側側がくる向きにセットしなければならない。
また、余りに奥深くにセットし過ぎると、回収時にトリガーに指が掛かるところまで手が入らなくなり、これまたナッツキーなどの道具の助けを借りる羽目になる場合があるので注意する。
カムの設置位置については、原則、自分の頭側の方にはあまりセットしないほうが良い。得てして、次のジャミングの一手に最適なクラックを、設置したカムで使えなくしてしまうからとのこと。でも、結構よくやってしまう。
③ パッシブナッツ
ナチュラルプロテクションのうち、カムのようにクラックのサイズにあわせて自ら変形して保持力を得るのではなく、変形することなく「受動的」にクラックの広いところから狭い下方に挟み込んで保持力を得るものを指す。いわゆる「ナッツ」。
古くはプロテクションとして河原の小さな石から始まり、「ボルトとナット」のナットを使用するようになった。「ナッツ」は、その複数形。
これらをクラックに挟み込んで、これにスリングなどをタイオフしてプロテクションとして使用した。
大きなものにはヘキセントリックなどがある。
強度はワイヤー径に依存するものが大きく、2~3kN (リングボルト以下)のものもある。
シングルワイヤーのもの(例えば∅2.5mmで強度4kN)とダブルワイヤー(例えば∅1.7mm で 強度2kN )のもの、ヘッドの材質がアルミのものや黄銅のものなど、構造の相違があり、強度や岩への馴染み具合、耐久性などに影響する。
代表的なものは、Black Diamond社のストッパーやヘキセントリック(六角柱型、一つで4サイズを選択でき軽量化に貢献、ネーミングが最高!by 乃村氏)。
設置の仕方は、クラックの広いところから中に入れて、下方の狭いところへ下ろし、引いて効きを確かめる。慣れが必要だが、しっかり効かせればカムよりも安心なくらい。
ただし、その分、回収が大変になる。百円均一で購入出来る、ヘッドの小さい金鎚があると、回収時にとても便利。
ナッツの引かれる向きが様々で、特に横方向などに引かれたりすると、脱落の可能性などがあるため、ナッツ二個を用いて「オポジションセッティング」で設置する事もある。
以上、とても勉強になりました。
文責:吉岡輝昌


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